一般社団法人栗原青年会議所 2020年度 理事長所信

上田 幸次郎

【はじめに】

-栗原青年会議所設立趣意書-

栗原郡は中世来大郡の一にかぞえられ古代無土器文化を始め道中歌等にも詠われている如く多くの文化遺跡を所持している。当に山紫水明の地人心素朴にして額に汗する農民とその交易により成立した町々がその主な構成である。今やこの栗原の里螢飛び交う金成耕土の上に東北縦貫自動車道路が作られ、桜咲く迫川堤沿を新幹線が風を切るといつた光景が現出しようとしている。一方郡民の生活は広域行政と云うスタイルの許に合理化を促され一つのテリトリーが宣言されつつある。吾々はこうした外的推移の中にあつて同世代に生を受けた者、この栗原に生きることを決意した者、相集い新しい価値を模索し追求する場を求めようとしている。栗原青年会議所がそれである。謙虚に勉び爽かに分ち合ふ場である。然様栗駒の暮雪も明日は尚輝きを増すであろう。

栗原市は、宮城県の北西部に位置し、国道4号線の東西に広がる田園地帯と秋田・岩手にまたがり山岳紅葉が美しい栗駒山麓、東は登米市にまたがり極東ロシアから越冬するために数多くのマガンやハクチョウが飛来する伊豆沼・内沼を誇る自然豊かなまちです。767年に建てられ今は無き伊治城は蝦夷の栗原地方支配の拠点として設けられました。伊治城での出来事で有名なものといえば、その後の中央政府と蝦夷との長い抗争の要因になった伊治砦麻呂の乱です。伊治(これはり)は、「くりはら」の由来ともいわれています。 1990年に開業したくりこま高原駅、2005年に10ヶ町村が合併したことで誕生した栗原市は、新駅設置を切望し推進した「新幹線新駅設置運動」や「栗原はひとつ」として広域合併を推進した「栗原市構想」といった過去の栗原青年会議所の複数年に及ぶ運動が現実となった姿です。2019年3月、日本政府は「ILC計画に関心を持って国際的な意見交換を継続する」と建設候補地が北上山地に決定したILC(国際リニアコライダー)計画に関しての関心を表明しました。また、東北縦貫自動車道とみやぎ県北高速幹線道路が直結する(仮称)栗原インターチェンジの整備計画が進められており、市外地域とのアクセスが強化されようとしています。

このような外的推移の中にあって、設立から50周年を迎える本年は設立の趣意を再認識し、今を生きる若者が集い、新しい価値を追求するときであると考えます。栗原の未来に希望を与えることができると信じ、会員一丸となり学び、語り合い、先を見据えた運動を推進していきます。

【地域ビジョンの策定】

青年会議所が理想とする「明るい豊かな社会」とは一体どんな社会でしょうか。それは時代や社会情勢によって異なり、今目指すべき「明るい豊かな社会」を表す具体的な姿は現役会員が示していかなければなりません。50周年を迎え、節目となる本年、栗原青年会議所はまちをどうしたいのか、その答えを明確にし、中長期的な運動の道標となる具体策を掲げる必要があります。

「新幹線新駅設置運動」や「栗原市構想」、「新生れくりはら」といった過去の栗原青年会議所の複数年に及ぶ運動や地域ビジョンは、若者の未来に対する理想を代弁し、行動する団体としてあるべき姿だと考えます。現状を踏まえるとILC計画は栗原の未来を考える上で特に大きな期待を抱かせてくれる外的推移ではないでしょうか。ILC計画は、実現すればアジア初の大型国際研究機関となり、世界中から研究者などの高度人材とその家族が研究施設周辺で生活し、国際都市が形成される可能性があり、ILCの研究のみならず、他の幅広い分野の技術開発が進み、新たな産業やビジネスが生まれる可能性もあります。ILC計画や(仮称)栗原インターチェンジを含めたアクセスの良さなどを活かし、栗原の活性化に向けた具体的ビジョンを描き発信していきます。

現役会員がまちを動かすエンジンを始動させる役割を自覚し、50周年を契機に中長期的な運動の第一歩を踏み出します。

【まちを創る「人づくり」】

栗原市の人口をみると1955年をピークに年々減少しており、2018年までの64年間で約50%の人口減少が進んでいます。人口減少は、地域経済規模の縮小に留まらず、若年層の都心部への流出に拍車をかける要因にもなります。このような現状に対し、政治や行政といった「誰か」に頼るのではなく、栗原に住み暮らす人々「自ら」の手でまちづくりを推進していく必要があります。

現在の栗原市は当たり前に存在しているわけではなく、先人が代々つないできたからこそ存在しています。今を生きる大人は自分たちの代を良くするだけでなく、次世代へつなぐ責任があり、また次の代のことを考えれば今の青少年の育成が重要になると考えます。他人を慮り、自分だけではなく周囲の人々やまちのことを考えることができる未来の栗原を背負って立つ青少年の健全な育成を図るべく、青少年育成事業を推進します。

また、2019年に栗原市内の高校2年生を対象に実施したアンケートによると、良い職場がない、やりたい仕事がないことを主な理由に「栗原市内で働きたいとは思わない」が約7割を占めたのに対し、東京(都会)に比べ、栗原(地元)に住みたいと考える割合の方が高く、若者が地元栗原に住みたいと考えているが働く場がないと考えていることが伺えます。これが若年層の都心部への流出の生の声と捉え、まちを創る大人、特に市内企業との協働を推進するとともに、まちづくりへの参画を図ります。まちの衰退を他人事にすることなく、住み暮らす人々が自らの手で創り上げる栗原を実現すべく、まちを創る「人づくり」を推進していきます。

また、2019年に35回目を迎えたわんぱく相撲栗原場所と、7回目を迎えたジョブKidsスマイルタウンくりはらといった栗原青年会議所が継続して行ってきた事業の今後の在り方を検討していきます。会員が減少傾向にあり、会員を取り巻く環境も変化している栗原青年会議所にとって、これから私たちが推進すべき運動とは何なのかを整理し、組織の繁栄とさらなる栗原の発展につなげます。

【会員を増やし、組織を強くする】

栗原青年会議所の組織に目を向けると会員数は年々減少し、活動のために会員にかかる負担が増加するとともに、事業を開催することが手一杯となり事業を発展させることや、新たな運動を打ち出すことが難しい現状であることは否めません。このような現状ではありますが、悲観することなく熱意をもって組織を増強し、栗原青年会議所が地域に与えるインパクトを高めるとともに、主体的に社会で活躍できる人材を輩出する組織であり続ける必要があります。

会員拡大は、入会者数と卒業者数・退会者数との差ですので、入会者がいたとしても、それを上回る退会者がいれば会員数は減少してしまいます。したがって、入会者の増加と退会者の抑制の両面を考えていかなければなりません。本年は「定着1名の積み重ね」を基本的な考えとして会員の増加を図ります。また、入会者が組織に馴染み、主体的かつ積極的に活動に取り組めるようにフォローアップを重視し、会員の定着を図ります。

会員拡大を果たし、栗原青年会議所の運動をより強力に推進する源にするとともに、地域のより多くの青年が成長と発展の機会を享受することにつなげます。

【会員の研修と運動を高める運営】

社会の変化のはじまりは何だろうかと考えたとき、それは人間一人のリーダーシップにあり、一人の人間が理想とする何かを志し、共感するフォロワーが現れ、協働したときに社会が動くものだと考えます。まちをより良く変化させるには掲げた自身の理想をみんなの理想へ誘うことができる人材、すなわち、社会や人々をリードする以前に自らを導くことができる人材が必要です。

組織一般には、肩書の力を使いながら人と接し物事を成し遂げていく側面がありますが、これはマネジメントという表現が適していると考えます。まちづくりは肩書のある人間だけのものではなく、市民一人ひとりが主役であるべきです。何かを志したとき、人々から「そんなばかな」と思われることがあるかもしれません。しかし、「そんなばかな」がいずれ「当たり前」になると信じて一歩踏み出す勇気をもつ必要があります。また、一人の人間にできることには限度があり、人々と共に行動するための共感を得ることが、リーダーとして必要な要素です。人々を巻き込む力の源泉は、自分が何を実現したいのかを見出すことであり、まちにより良い変化をもたらす力として「セルフリーダーシップ」の向上を図る事業を行います。

自身の内面から湧き出る「こうしたい」が人々をリードし、やがて社会をリードするものと信じ、こうしたリーダーになりうる人材研修を推進します。 また、栗原青年会議所の推進する運動が地域社会にインパクトを与えるには、組織の規則を守り、社会的信用を得られる組織を形成することが必要です。総会や例会、その他諸会議を適切に行い、より良い運動の展開につながる確りとした組織運営に務めます。

【おわりに】

栗原青年会議所は、日本青年会議所本会と東北地区協議会、そして宮城ブロック協議会の会員会議所であり、日本青年会議所は国際青年会議所に加盟しています。世界的団体の一員として恒久的世界平和を願い、栗原での運動とともに、出向を通じた素晴らしい同世代の人間との出会いを含め、地域の枠を超えた活動にも励んでいきます。

青年会議所は単年度制であるがゆえに中長期的な視点に立って、1年、1年を積み重ねていくプロセスが難しくとも重要になってきます。本年何かを成し遂げ、大きな成果を上げるのは不可能かもしれません。しかし、その第一歩を踏み出す1年にしていきたいと考えます。

-栗原青年会議所設立宣言文-

われわれは、
栗原に生きる青年であることに誇りを持ち
世界人たらんとする目標を定め
栗原の大地の上に
人々によつて奏でられる歓喜のうた声を
現実のものとすべく
ここに集い
栗原青年会議所を設立いたします。

いま一度設立の原点に立ち返り、50周年を迎える2020年の運動を会員一丸となって推進していきます。